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日曜日の午後、とある駅のプロットフォームに続く階段を降りていた時のことです。階段の中途に若い男性がぼんやり立っているのが目に入りました。一見して何か様子が変でした。その傍を通り過ぎる瞬間、彼が私に声をかけました。「すいません、実はお金を900円落としたのですが・・・」
咄嗟に物貰いだと思った私は手を左右に振って話もせず通り過ぎました。当日は冷たい雨が激しく降っていました。電車に乗って、何か心に引っ掛かりが残りました。小さな頃、魚を食べて喉に小骨が引っ掛かった「不快感」みたいに。
決してお金持ちではありませんが、彼に千円くらい上げるくらいの余裕はあります。でも彼は本当にお金を落としたのだろうか?働くのが嫌なだけで物貰いで生活している質の悪い怠け者では?
財布を落として一銭もない場合、私ならどうする?お金を借りられる人が近くに居なければ警察に行って自宅までの交通費を借りるだろう。いずれにしても、見ず知らぬ人に声をかけて無心などしないだろう。ましてコンビニに押し入って強盗など論外である。
だけど、細かいことを言わず騙されたと思って千円くらい黙ってあげても良かったのではないか?親はそうだった。嘘だと思っていても黙ってお金を工面してくれたではないか。
頭の中でジキルとハイドが激しく言い合います。私は真ん中に入って右往左往するだけ。どちらの言い分も正しい。人に親切を施すって難しい。彼に千円を上げるのは親切でもあるし、同時に堕落させる余計なお世話でもある。
もう一つの選択肢。彼を喫茶店にでも誘って話を聞き最善の道を探し出す。物貰いで生計を立てているなら、良くないと諭す。が、そんな時間もないし、もし彼が悪意の塊だったら、余計な節介だとナイフで刺されるかも知れない。
ああ、面倒くさい。やはり「我関せずえん」「見ざる・聞かざる・言わざる」が真っ当か。住み難い世の中になったもんだ。 |