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6時30分。腕時計で時間を確認して出発。東京・N区の町を通り抜け、隣の区の街中へ歩きます。小雨は次第にやんでほっとしました。7時45分にはT区の大ターミナル駅に到着しました。N駅から電車に乗れば五つ目の駅(終点)です。誰も1時間15分で着くとは思わなかったのでやる気充分です。「往復しましょう」という声もありましたが「初回なので、今日はここで終わります。電車で帰りましょう」と現地解散しました。
じつは2人の中年女性が疲れをみせていたのです。お互いによく知っていれば本音もみえますが、初対面のメンバーでは誰かが無理をしているかも知れません。引率する私には、解散するまでは責任があります。途中のオシッコタイム。トイレを貸してくれそうなところのチェックはまだ充分ではありません。誰かが倒れたらどうするか。誘導する私はたえず最悪のことを想定して歩いています。
思えば何人かが集まってウォーキングするのは結構リスクがあるものだと思います。早朝歩きとしては、わずか1時間でしたが、足の早い人、足の遅い人、ウォーキングのベテラン、まったくの初心者。いずれも同じ時間に同じ体験をすることで、同じ喜びを得たことは、よかったと思います。ちなみに電車でI駅からN駅へ帰着した人は6人。あと2人の男性は同じコースを歩いて帰りました。
Aなぜ歩こう会をはじめたか。私が○○歩こう会を計画したのは、単なる思い付きではありません。じつは昭和48年頃。私は当時のM銀行人事部厚生課に出入りする業者でした。主に編集制作の請負でしたが、印刷物ぐるみのトータルで受注することがあります。その中に「トリム手帳」がありました。
当時は政府の中に国民健康運動本部があり、各大企業に「トリム運動」を義務付けていました。トリムは船に関する用語です。心と体のバランスを意味しています。政府はなぜこんな運動をするのか。という理由は簡単でした。医療費の公費負担が次第に増えてきたからです。都市銀行は健康保険組合があります。そこでは単に事務的な管理をするだけでなく、行員の健康診断を毎年2回行なっていました。
健康状態が出世を左右することもあります。まだ銀行といえば、品行方正な男女が勤める品格あふれた職場というイメージがありました。ところが精神異常、肺がん、さらには女子行員にエイズが発見されるという時代の暗部が、行員の中からも発見されるようになったのです。もちろんこの話は禁句とされました。M銀行の男子行員は30%。あと70%は女子行員です。
恐怖の支店長会議など支店長になりたくない行員が続出していた時でしたが、女子に問題が多かったことは意外でした。男子は心身症、女子は性病に注意といわれたものです。ストレスによる精神異常は私の知人にも見受けられました。トリム運動は、きれいごとだけではない切実な一面があったのです。
続く |