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| |中高年シニアの健康管理室|投稿| | |||||
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パブ・ローズは、金回りのよい客が多い。山川信二もその一人であった。山川信二は歯科医である。しかし「こんなに競争が激しいなら歯科医なんてしなければよかった」と愚痴をこぼした。そんな時、同席していた歯科医の峰岸道夫が「美容整形は儲かるらしい」ともらした。これがヒントになって、山川信二が矯正歯科に看板を変えたのは半年後のことであった。この町で「矯正歯科」は初登場である。
矯正歯科は美容整形になる。歯科医の資格は持っていても虫歯などの一般診療はできない。保険証が利かない。自由診療なのだ。これが結構ボロい。歯l本を形よく美しくするだけで10万円以上はかかるといわれる。
O駅前ビル2階の診療所内は若くて美人のナース姿が数人常駐した。一般歯科医院と違った設備、ムーディーな照明で、訪れる患者(?)を別世界へ誘導する。歯は1本だけ美しくなればいいというわけではない。100万円以上かけても、きれいな歯にしたい客は予想を超えた。繁盛した。2号店、3号店の診療所が開設されていった。
山川信二は55歳になっていた。妻と娘2人がいる。長女は29歳。まだ独身である。長女が「お父さんの診療所はきれいだから私、手伝おうか」と話しかけたが、信二は「いや、客とのトラブルもある。身内は一緒でないほうがいい」と断った。妻の聡子も「毎晩遅くなるわよ。やめときなさい」と娘をにらんだ。平和で理想的な家庭だった。高給で募集したナース見習いに、女優のような美女が就職するまでは…。
平成12年。地元の歯科医師会の役員だった山川は正式に同医師会を退会した。矯正歯科診療は一般歯科医には異端児だ。しかも突出して儲けているという噂が立っている。
山川とつきあいのあった医師仲間も次第に敬遠するようになった。仕事が終わったあと、近くで夜遅くまで軽く遊ぶにはパブが一番だ。とくに陽気な性格の山川は、数少なくなった医師仲間を誘っては、パブ・ローズへ通った。
パブ・ローズのホステスは日本人だけでなく、中国人やフィリピン人もいる。30歳前後、素人っぽいところが魅力だった。しかし飛び抜けていい女はいなかった。山川はいつもカラオケで福山雅治の「桜坂」を歌った。若者しか歌わない歌である。この店で山川とよく同席した大竹は堀内孝雄の「影法師」や「愛しき日々」を歌った。
山川が、国民的美少女といわれる女優・後藤久美子そっくりの若い女性を連れてくるようになったのは、その年の秋である。大竹は「まさか」と半信半疑だったが。山川と親密なのが次第にわかった。彼女は周りにも悪びれず無邪気に対応した。ホステスとも仲良く話をする頭のよさをみせた。歌も女の子らしく、最新の曲を素直に歌っていた。彼女は25歳である。
そして。1年後。山川は妻と離婚、ゴクミ似と正式に結婚した。だが山川は、その1年後ガンで他界した。山川矯正歯科医院は、いまでも経営が続けられている。経営権はゴクミ似が掌握した。この若い未亡人は、市役所前の高層マンションの最高階で優雅に暮らしている。(登場人物名、店名は仮称)
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