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(2)笑えないぞ!その32『喜劇が消えてゆく(11)』

by イジワル・ジイサン
男はつらいよ
平成の喜劇映画といえば、やはり松竹映画の山田洋次監督「男はつらいよ」だろう。はじまりはフジテレビだった。1968年10月から約半年間、テレビドラマとして放映された。寅さん役は渥美清だが妹さくら役は長山藍子だった。

その最終回「男はつらいよ」で何と主人公の寅さんは沖縄のハブに噛まれて死んでしまうのである。この時の脚本を書いたのが山田洋次であった。山田洋次はあまり気乗りしない松竹映画を説得して「男はつらいよ」を映画化した。それが松竹映画のドル箱となり世界最長のシリーズとしてギネスブック国際版に認定されることになろうとは誰も予測していなかった。

山田洋次はこの映画48本の原作、脚本を書いている。うち46本を監督した。寅さん映画づくりでは日本全国をロケしてまわったことも人気の秘密の一つだった。山田洋次監督による映画の多くは背景に地域色を濃く映し出していることである。これは地域活性化に関心の高い地方の人々に共感を呼び地元住民や自治体が撮影や宣伝まで協力するというパターンを生んだ。「男はつらいよ」で撮影地にならなかったのは埼玉県と富山県だけといわれる。

ちなみに1977年に第1回日本アカデミー賞監督賞を受賞した「幸せの黄色いハンカチ」は北海道・夕張を有名にした。2006年の「武士の一分」2004年の「隠し剣 鬼の爪」2002年の「たそがれ清兵衛」などの時代劇は山形県でロケを行い地元を本当に活性化させた。

いずれの映画も地味なストーリーだが、山田洋次監督の作品には、必ず喜劇性と悲劇性が織り込まれ、思わず観客の心をつかむ非凡な演出がある。「男はつらいよ」は喜劇仕立てではあるものの、悲劇的なかくし味を効かせることで時代を風刺した喜劇映画であった。
だが時折、ストーリーや演出に、おそろしく乱暴で雑な部分があり、理屈の通らない場面はある。つまり、そんな理屈はどうでもよく、それが映画なのだと思えばよいのだろう。個人的な好みでいわせてもらうと。

リリー役の浅丘ルリ子は歴代マドンナの中でもひときわ絶妙な名演技をみせた。彼女が出ている作品は「男はつらいよ」シリーズで4本もあった。時に救いを求めるように寅さんの背中を見ている姿はフランス映画を観ているようであった。愛しているから結婚できないという寅さんの思いは切なく伝わってくる。しかしリリーの場合は、一緒に暮らしても良かったのではないかと思う設定が何度かあった。夢の中という設定でいいから寅さんとリリーは結婚させたかった。

喜劇に悲劇の部分を強烈に残した映画はある。しかし、それは喜劇映画でなく悲劇映画である。いやレベルの高い悲喜劇映画というべきか。ともあれ喜劇と宣伝しながら笑えないし悲しみもないドラマがふえてきたのは悲しいことである。


(続く)




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