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【投稿連載】

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(2)笑えないぞ!その26『喜劇が消えてゆく(5)』

by イジワル・ジイサン
藤山寛美
藤山寛美
筆者は九州生まれである。少年時代から熊本や博多で活躍したお笑い芸人、ばってん荒川をラジオで知っていた。お米婆さんは九州弁を使い迫力ある毒舌で笑わせた。アクの強い芸風なので、私より年上かと思っていた。ところが、1937年2月8日生まれで私より一つ年下だったと知った。

2006年10月、彼が逝去したというニュースをみたからである。会ったことはないが、母はフアンだった。「あれは、面白かバイ」といつも話していた。福岡のテレビや実演で、ねっとりと「そぎゃんこと、いうばってんか」と身をよじらす不気味さは凄みがあった。九州以外の人には、よくわからないかも知れないが、これほどローカルな地方弁を徹底させた芸人はいるまい。ビートたけしなどから才能を愛され、全国ネットのドラマにも出演した。最近、地方弁がブームになっている。これからビッグになる矢先だった。友人が他界したように切ない悲しみを覚えた。喜劇一筋の芸人に「死」は似合わない。
 
死ぬまで喜劇一筋といえば、笑いのメッカ大阪から生まれた芸人は多彩だった。いまは吉本企業の多量生産で小粒ぞろいになってしまったが、これは伸びるなと思わせる芸人はいないでもない。

東京人からみると大阪弁の会話を聞くだけで笑ってしまうことがあったが大阪弁は映画やテレビで東京弁に次ぐ標準語になってしまった。東京弁で「あいつは馬鹿だ」は大阪弁「あいつはアホやな」になるが馬鹿という言葉が冷たく断定的なのにくらべて、アホは温かみがある。仕方がないなと許しているからだ。

そのアホ役を演じたら天下一といわれたのが喜劇一筋で死んだ藤山寛美だった。女優・藤山直美の実父だ。こういうタイプの松竹新喜劇のスターは、おそらく、これからも出ることはないだろう。

藤山寛美が61歳という若さで逝ったのは、あまりにも惜しまれるが、江戸時代から芸人を滅ぼす遊びがある。金と女である。桂春団治をはじめ芸人は少々売れてくると遊びに理由をつけたがる。「遊ばなければ花がない」という理屈である。本人には蜜の味だが金は水道水ではない。藤山寛美も花街で豪遊した。週刊誌にも載った有名なものでは、バーのボーイへのチップに車を与えた話がある。そのために多額の借金を抱え破産した。実生活の面でも破天荒であることが芸のこやしになる、と考えたのは彼だけではない。お笑いでは、のちの横山やすし(漫才)も相当なものであったという。

天才的な才能に恵まれた芸人が、どうして理性を失うのかはわからない。が、芸人としてみる場合、毎日お客に受けるか受けないかの勝負は大変なプレッシャーらしい。しかし藤山寛美の場合、松竹が負債を肩代わりして以来、見事に往年の人気を取り戻した。ところが体の不調を覚え検査すると肝硬変。妻と夜遅く中座へ行って3日後、他界した。
 
テレビの舞台中継を何度か見た。アホな若旦那や丁稚小僧の役は、惚れ惚れするような味を発散していた。実演ばかりでなく映画をつくればよかったのにと思う。ともかく藤山寛美の死によって松竹新喜劇の火は消えた。 


(続く)




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