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小沢一郎氏と警察官僚の戦いは別として、マスコミが変だという話は数年前から、個人的に痛感していた。私が不当逮捕され不起訴になった「職務強要事件」に関して朝日新聞の記者が自宅まで来た時、ある事実を「どうして書かないの」と質問した。すると若い記者は申し訳なさそうに「また、すぐ訴えられるので」と苦渋の表情をみせたのである。
私は大手の新聞社でも、そうなのかと驚いたことを覚えている。A氏との会話の中で映画「消されたヘッドライン」は権力と報道の戦いを描いたものだから面白いだろうという話になった。さっそく映画「消されたヘッドライン」を観た。この映画は2003年、イギリスのBBCテレビドラマ「State of play〜陰謀の構図」が5月18日から6月22日にかけて放映されたものが原型である。
じつは日本でも2008年10月8日からNHK衛星第2で水曜夜11時から放送されている。TVドラマの舞台はイギリス・ロンドンだが、ハリウッド映画では、アメリカ・ワシントンになった。「ヘッドライン」とは、トップ見出しのことだ。「消された見出し」としたほうがわかりやすいが、それではつまらないのだろう。
映画「消されたヘッドライン」は途中まで、どきどきするような演出で、さすがにお金のかけ方が違うとうれしくなった。俳優も「レイン・フォール」とは違う。主人公を演じるラッセル・クロウは映画「LAコンフィディシャル」いらいファンである。まわりの女優や脇役も見事な演技派だ。それだけに竜頭蛇尾の展開にがっかりした。
主人公は犯罪の事実を知ってすぐ警察へ知らせなかったことで警察の忠実な情報提供者となる。軍需産業からの圧力や迫害はなく、一人の暗殺者を利用した友人を告発する話に終わってしまう。タイトルから推察する「記事を掲載するな!」という話もない。ヘッドラインは消されていない。アメリカの言論は健在なりというハッピーエンドなのである。
「年間400億ドルの利権がある」という巨大軍事産業の話は思わせぶりな追及だけで終わり。宣伝文句から巨大産業と戦う新聞社を想像したが、それはまったくない。ハリウッドに圧力があったのではないかと疑いたくなった。そうなるとラッセル・クロウの役にも疑問を持った。まるで半世紀前の記者である。いまどきメモや資料を周りに山積みする記者はいない。データはすべてパソコンに入れ鍵をかけておく。ふしだらな生活を絵に描いたような記者の設定は監督のイメージなのだろう。
現実は違う。10年前まで、中流新聞社でも記者は高給取りであり、ベテランにはカメラマンと運転手つき取材専用車がある。記者は愛想よく品のあるサラリーマンタイプが多い。最近は記者も小型カメラを持ち携帯パソコンで原稿を送信する。リアルタイムで原稿を送信するのだ。現実の記者はドラマより格好よく、ドラマより過酷である。さて映画「消されたヘッド・ライン」私だったら、こういうラストにしただろう。主人公の記者は別の(軍事産業企業に依頼された)暗殺者に殺される。新聞社は閉鎖する。黒いスクリーンに、白抜きで文字が流れる。「いまアメリカでは倒産や投売りする新聞社が続出、その社員約1万2千人が失業している」と。
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