ぶたい制作日記 2005年8月11日(木)

「絶妙な取り合わせ」8月7日の稽古場にて

古典中の古典、これぞ和物!という舞台でありながら、らしからぬ(?)企てを実行中の我が舞台「好色一代女」。“原作の持つ元禄の色と香りを損なわないまま、現代人にも共鳴する飛び切りお洒落な舞台を” というスローガンを掲げ、現在もこの路線を突っ走っている訳ですが・・・。

さて本日のつぶやきでは、前回お届けした顔寄せより1週間後の稽古場での一コマをお届け致しましょう。


役者を待つ稽古場の様子


「これまでに無いような斬新な舞台」とは云え、実際のところ「言うは易く、行うは難し」でございまして、具体的に計画を推し進めていくにはそれ相応の覚悟と裏づけの有る自信が無ければ出来ることではありません。誰だって人真似などしたくはありませんもの、それは芝居の世界に限らず小説であれ絵画であれ、芸術であれば何だって同じでございましょう。されど悪戯に奇をてらったところで、実力が伴わなければ観客は共鳴するどころか失笑を買う茶番劇ともなりかねません・・・。ここのところが難しいのでございます。では我がカンパニーの「好色一代女」はどうでしょうか・・・。ご安心なされませ、無謀とも思われる様々な試みを随所に配した本公演は一流スタッフの手によって、着々と進行しております。

この日、稽古開始時刻の13:00より1時間ほど前、音楽監督を務める島健さんが編曲をし終えた曲(の楽譜)を携えて熱き稽古場にお着きになられました。待ちに待った挿入歌のお目見えであります。

今を時めく島健さんがご持参下さったのは3曲。(全編では40曲を予定しています)誰もが必ず何処かで一度は耳にしたことのある曲で・・・えぇい、ここは勿体付けずに思い切ってバラしてしまいましょう。

まずは「Anything Goes」(エニシング ゴーズ)。ジャズのスタンダードナンバーとして余りにも有名なこの曲、ニューヨーク・ブロードウェイや日本でも同名のミュージカル作品となり、世界中の観客を魅了したメインテーマ曲です。2曲目は「Take me out to the Ball Game」(テイク ミー アウト トウ ザ ボール ゲーム)。松井やイチローが活躍を続けるアメリカ大リーグで、試合前(試合中だったかもしれません)にスタンドを埋めた全観客が大合唱する、日本では「私を野球に連れていって」という題名のあの曲です。そして3曲目は「法界坊」(ほうかいぼう)。これはかなりご年配の方でないとご存知ないかもしれませんが、我が国が生んだ最高のエンターテイナー、喜劇王と呼ばれた“エノケン”こと榎本健一が映画「エノケンの法界坊」(1938年)の中で唄っていた奇妙にも(?)一度聴いたら耳から離れないという何とも不思議な曲でございます。

この日の為に稽古場に持ち込んだ電子ピアノを前にした島さん、スタッフが差し出したお茶に手を出すか出さないうちに、早速これらの曲を弾いて下さったのですが・・・。これが皆さま、楽しいの何のって!黙って聴いているつもりが、気が付くと勝手に身体がリズムをとっているという寸法でございまして、やがて島さんが来られることを聞かされていない出演者が1人・2人と稽古場入りをするのですが、入り口の扉を開けた途端、思いも寄らぬ光景(ピアノの前に座った島さんをプロデューサー・演出家・歌唱指導・振付といったスタッフ、そしてストップウォッチを片手にした演出助手、録音装置にへばり付いている制作スタッフや小生などが、ぐるっと取り囲んで神妙にしているのですから・・・)に、皆一瞬「・・・?・・・」となるものの、事態を飲み込み魔法のような指使いで奏でられる島さんのピアノの音を聴くやいなや、誰もがたちまち耳を奪われ、心を奪われるという状態。近藤正臣さんなどは、タンクトップにジーンズというラフな格好のまま稽古場衣裳に着替えようともせず机の角に腰を掛け、半眼のまま気持ち良さそうにスウィングしているのですから・・・。

演出家から「あと2小節ほど長くして」とか「この曲が掛かるシーンは豪華な盛り上がりを見せたいので、もう少しゴージャス感が欲しいナ」などという、素人が聞いたら「いきなり無茶だよ」なんて思えるようなリクエストにも、島さんは「オッケー」などと仰りながらいとも簡単に持参された楽譜にサッとペンを入れ、やがて全ての要求を満たした楽譜を元に仮録音がされたのですが、この日のお土産(?)の3曲の録音が終わるやいなや稽古場は拍手の嵐。その瞬間稽古場はまるでコンサートホールのようでございました。島さんのピアニストとしての腕前や編曲家としての実力を目の当たりにした感動は云うまでもありませんが、小生が何より興味深く、そして嬉しかったのは出演者たちの驚きと満足の表情、これでございます。

「えっつ、これがあのシーンでかかるんですか!マジですか?」

「凄いですね、この舞台でこの曲をやっちゃうんだ!」

「早く、お客さんの驚く顔が見たいよね」


こうして“和物の舞台とジャズのコラボレーション(融合)”という一見無謀なる挑戦も、島健という優れた音楽監督の下で見事に実現しようとしております。

さて次なる挑戦は果たしてどうなることでしょうか・・・。それは追い追いお伝えすることに致しましょう。

ではでは

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