「舞台監督のつぶやき」
東北地方も梅雨に入り、加減によっては恵みともなるこの雨も、先週は日本列島各地に被害をもたらしたようでございます。今や全国津々浦々にファンを持つこのサイトでは、軽率にも「良いお湿りで・・・」などと言ってはなりません。被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。
さて当カンパニーはと言えば、先週は珍しく穏やかな一週間でございました。たまにはこういうことも無ければ、我々スタッフもやっちゃぁいられません・・・。
とは申すものの “穏やか”なのは形ばかり・・・。舞台制作の職場に真の平穏など永遠にあろう筈もなく、多少の波風は始終我々スタッフを取り巻き、大型台風がいつ発生してもおかしくない危険性は常に身辺に潜んでいるのでございます・・・。そんな中、営業を任されている小生も自らの役割をまっとうすべく、木曜日には某組織(危ない地下組織などではございません、くれぐれも)が主催し、朝の6時半という何とも早い時間から始まる経営者セミナーなる会合に飛び入り参加し、「早く寝なくちゃと思いつつ、日本VSブラジル戦をついつい最後まで観てしまった・・・」などと、サッカーのコンフェデレーションカップを観ていたらしい赤い目の紳士たちに、我が舞台「好色一代女」を大いに宣伝して参りました。スポーツ観戦も結構ですが、その後は、舞台観劇もして欲しいものです。(経営者たるもの、芸術・文化にも造詣を深くしなければネエ・・・)
さて、そんな訳でございまして今回は皆さまにご報告すべき大事件(?)こそありませんでしたが・・・そんな折り、何の前触れもなくフラッと事務所にやって来られ、資料のコピーを録りながら、ひとしきりつぶやいて行かれた当作品の舞台監督(高橋氏)のそのつぶやき内容を、当人には内緒でそっとお伝えしましょう。
「俺ぁ、もしかすると馬鹿かも知れねえ・・・」「駄目だ、あの本(「好色一代女」の脚本)、俺には判らねえ・・・」「誰か、教えてくれ、ありゃ一体どんな舞台になるんだ、えっ?」「何遍か読んだら判るようになるのか?」「それとも俺あやっぱり、馬鹿か?」「こんなことぁ、今回が初めてだ・・・」
視線は斜め45度。しかしその視点は定まらず、誰に話し掛けるという風でもなく、ぼんやりとこんなことをつぶやいておられた当カンパニーが誇る世界の舞台監督Mr.高橋・・・。
いやぁ皆さま、この作品「好色一代女」はこれほどに面白いお話なのでございます。「えっ、何でそうなるのか」って?そりゃそうでしょう・・・。舞台の世界に身を投じて以来、そのキャリアは早やウン十年。演出部スタッフとして数え切れないほどの舞台に携わり、当カンパニーでも「近松心中物語」や「王女メディア」をはじめ数々の名舞台の舞台監督を務めてきた天下のMr.高橋が、これまでついぞお目に掛かっていないほどの“凄い本”、これこそ「好色一代女」なのですから。つまらない筈は無いじゃぁありませんか!
「ちょっと監督、悩むのはまだ早いスよ。装置が決まって、演出プランが出てからでしょ、監督の出番は」「待っていましょうよ、演出家からのプランを・・・。悩むのはそれからだって遅くはありやせんぜ」
そんな小生の言葉が耳に入ったのかどうなのか、中空を見上げた監督は相変わらず虚ろな目で・・・。コピーを録り終えた資料をきちんと畳んでしまってからは、やおら「じゃあな・・・」と事務所を後にされたのであります。流石に心配になって追いかけて行った小生がエレベーターの前で声を掛けると、「オオ、居たのか」と振り向きながら、またこんなつぶやきを漏らしたのでございます。
「やっぱり、駒鳥(コマドリ)はきっちり作らなけりゃならねえだろうな・・・」と。
最終稿のチェックを終えた脚本「好色一代女」は、まさに今、印刷に掛かっております。来週には刷り上ったばかりの本がインクの匂いをプンプンさせながら届けられることでしょう。
舞台監督を悩ます“判らない”の本当の意味、そして最後のつぶやきに出てきた“駒鳥”とは・・・。そんな種を明かしながら、これからも皆さまには舞台「好色一代女」の舞台裏をお伝えして参りましょう。 ではでは
注)舞台監督の役割に就いては、昨年11月12日付けのつぶやき「まだまだ稽古場で〜す」にて解説致しました。今回登場の舞台監督との会話も出て参ります。お忘れの方はそっと、過去のページを広げて見て下さいませ。
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