ぶたい制作日記 2005年6月23日(木)

「音楽打ち合わせ」〜異色の顔合わせ 〜

今秋9月2日に初日を迎える舞台「好色一代女」。稽古はまだ先のことではありますが、舞台裏では本番に向け着々とその準備が進められております。

本日のつぶやきでは本来の舞台制作日記らしく、ある日の打ち合わせ風景をお伝えしましょう。


6月11日(金)曇り この日の事務所は朝からいつになくソワソワムードに包まれておりました。と申しますのも実はこの日、「好色一代女」の音楽打ち合わせが事務所の会議室(と言っても猫の額くらいの広さでございますが)で予定されていたのでございます。出席者はプロデューサーである中根のほか、音楽監督を務める島健、主演の佐久間良子、そして三味線奏者の上妻宏光といった顔ぶれ。これまでにも島・山田(演出家)両氏をお呼びしての打ち合わさせは何度かありましたが、この日のそれは佐久間さん・島さん・上妻さんこのお三方の初顔合わせという、これまでの打ち合わせとは趣きの異なるものでございました。この何とも奇妙な(?)取り合わせ・・・小生もプロの演劇人なれど、これから始まる予想もできない展開に、心はそぞろ一体どうなることやら、考えただけでも期待で胸はワクワクドキドキ。仕事が手につかないという何とも情けない状況でございました。ちなみに佐久間さんが我が事務所にお出ましになるのはこの日が初めてでございました。高橋惠子、北大路欣也、平幹二朗といった面々は何度か来られたことがありますし(同じエレベーターにたまたま乗り合わせた他階の会社の人たちは随分びっくりされておりました)、近くに居を構えていらっしゃる瑳川哲朗さんなどは勝手知ったる何とかで「これからウォーキングに行くんだけど、その前に寄ってみた」などとおっしゃりながら、その度に餡子が尻尾の先まで詰まった鯛焼きをお土産に持って来て下さいます。「冷めないうちに食べろよ〜」って。またつい先日は松田洋治さんが2日続けて遊びに来られましたっけ。あの時のお土産のケーキも美味しかった・・・。

それはともかく、散らかった事務所を少しでも整理整頓すべく、斜めに置いてあるテレビのリモコンを縦に直したり、少しばかり中心がずれている壁掛け時計をまっすぐにしたりと、スタッフ一同朝からおもてなしの準備を(それなりに)しながらお客様のご到着を待っておりました。

さて、皆様はこの打ち合わせに参加される方々をご存知でしょうか?佐久間さんについては今更申し上げることもなかろうかとは思いますが・・・東映ニューフェースとしてデビュー以来、銀幕のスター街道(懐かしいこの言葉はもはや死語になりつつありますが)をまっしぐらに歩いてこられ、現在は舞台を中心に昔と何ら変わらぬ美しさで今なお王道を極めていらっしゃる女優さんでございます。で、次は島健(しまけん)さん。その道に詳しい方であれば勿論よくご存知とは思いますが、日本屈指のジャズピアノ奏者にして、編曲家、そして作曲家としても一流という方。音楽界は勿論のこと、演劇界に於いても今や無くてはならない一流アーティストでございます。(ちなみに奥様はミュージカルを中心にご活躍の女優・島田歌穂さんであります)当カンパニーの製作作品「新・近松心中物語」や「暗い日曜日」では劇中歌の編曲を、ミュージカル「PURE LOVE」(主演/中川晃教)では素敵な曲を何曲も書いて下さったりと、当カンパニーでは何があろうと足を向けては眠れぬ程お世話になっている御仁でございます。さて、最後のご紹介となった上妻さんについては・・・もしかすると小生より皆様の方がよくご存知かも知れませんね。そう、今をときめく津軽三味線の若き天才奏者でございます。NHKを始め数多くのTV番組にも出演されていらっしゃいますから、どなたも一度くらいはどこかでご覧になったことがあるのではないでしょうか。

実は今回のこの舞台、プロデューサーの意図で「原作の良さを活かしつつも、古典の持つ古臭いイメージは払拭しよう。目指すは、お洒落で楽しい“ザッツ・エンターテインメント!”」というスローガンのようなものがございまして、その意思の表れが斎藤雅文氏への脚本依頼であり、音楽スタッフとしての島さんの起用があった訳であります。こうした流れの中で上妻さんの参加が決定された訳ですが、言ってみればこの大胆な起用はプロデューサーの最後の駄目押し、「どうだ、参ったか!」なのでございます。

さて、上妻さんをご存知無い方の為に簡単にご紹介致しますと、上妻宏光(あがつまひろみつ)氏は、茨城県出身(青森で無い所がまた意外でございます)の今年32歳になる若者。趣味で習っていらしたお父様の津軽三味線の音に魅せられ(「全身に電気が流れた」と申されておりました)、6歳から正式に習い始め(教室に通う前には既に見よう見まねで、3曲は弾きこなしていたそうでございます)、何と14歳、中学2年生の時に史上最年少で「全日本津軽三味線競技大会」で優勝し、その後最も権威のある大会である「津軽三味線全国大会」では並み居る津軽出身のベテランたちを尻目に’95・’96年の2年連続優勝の快挙を果たした実績を持っている天才でございます。

打ち合わせの開始予定時刻通りにお見えになったこのお三方、初対面らしくそれぞれが自己紹介をしている間こそぎこちなかったものの、一流は一流同士たちまち意気投合していったのであります。「上妻さん、劇中の曲を楽譜にしてきたんですけどちょっと見てくれます?おたまじゃくしだけど・・・」と島さんが問えば、上妻さんは「拝見します」と5線譜の楽譜に目をやり、「ちょっと弾いてみましょうか」と持参されたあの太棹の三味線をおもむろにケースから出して準備をなさる。と、こうした光景をご覧になっていた佐久間さんは「あら、ここで弾いて下さるの?実は私、今日自分の三味線を車に積んで持ってきているんだけど・・・持ってきていいかしら」「教えて頂きたいわ」などとおっしゃる・・・。

そんな様子を部屋を仕切る衝立の陰に隠れて耳をそばだてている小生は「えっつ!?」「マジですか!?」の連続であります。だって、あの島さんが書いてこられた曲を、あの上妻さんが初見で弾く。それに加えて佐久間さんまでがご自分の三味線をご持参ですよ・・・。ファンならきっと涎が出てくるような光景に違いありません。

こうして予定されていた夢の初顔合わせは“あっ”という間に、しかし濃密に過ぎていったのであります。本来なら「まあどうぞ宜しく」のご挨拶の後は、プロデューサーを仲立ちにして作品に対する姿勢や考えをそれぞれが述べ、それが終われば大人しくお帰り頂く(?)のがこの手の顔合わせの典型なのですが、この日のそれはいやいやどうして。立ち聴きするに充分価値のあるものでございました。

さて皆様、この顔合わせの席で一体どんな濃密な話がされたと思いますか?果たして島さんが書いてこられた曲とはどんな曲だったのか、それを津軽三味線の名手である上妻さんがどう演奏したのか・・・。本来の日記であるならば、正直に(?)お話するのが筋っていうものかも知れませんが、これは微妙に演出に関わることでございまして・・・残念ではございますが、後は本番を観てのお楽しみにさせて頂きとうございます。

「おいBunn、お前いつからそんなに偉くなった?」などという皆様のお声が聞こえてきそうですが、どうかそこまではご勘弁下さいませ・・・。今やメジャーとなりつつある当サイト「い〜悠々」で、舞台の手の内を今から暴露していたら、プロデューサーよりたちまちのうちに“ところ払い”を仰せつかってしまいます。ご了解下さいませ。

このようにして、9月の舞台に向けいよいよ面白くなって参りました。稽古開始は8月1日。本番初日までの丸々一ヶ月、暑い盛りに夏休みや盆休みなど返上で稽古・稽古・稽古であります。しかしこの舞台、もしかすると演劇史上にその名を残す作品となるやも知れず・・・。小生も益々励みたいと思っております。今後のつぶやきにも期待していて下さいませ。 ではでは

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