ぶたい制作日記 2005年5月6日(金)

「出演者の横顔」〜撮影現場より〜

チケットの発売初日(5月16日)を目前に控えた当カンパニーの次回作、舞台「好色一代女」。

待望の本も出来上がり、お陰さまで出演キャストがようやく固まりました。

さて今回のつぶやきでは、先日行われた宣伝チラシ用の写真撮影の模様などをお伝えしながら、一部ではありますが、出演者の横顔をご紹介して参りましょう。


4月23日(土)AM9:00。六本木交差点近くの写真スタジオには、この日に撮影を予定している7名の役者を待ち受けるべく、プロデューサーを始めカメラマン、ヘアデザイナー、メイクアップデザイナー、チラシデザイナー、衣裳スタッフなどが朝から顔を揃え、準備は早々と整っておりました。

しかしチラシ用写真の撮影といっても、今年1月の佐久間良子さんの撮影から始まって何とこれが3回目の撮影でございまして・・・(大抵の場合は1回で済むのですが)ということは当然撮影が行われる度毎にチラシに改訂を加えて印刷するわけで・・・「好色一代女」ルテアトル銀座公演はこれまでになんと3回(種類)のチラシを印刷しておりました。その理由には勿論多忙な出演者のスケジュールが取れなかったということも有りますが、やはり一番の原因は本の上がりの遅延が影響をした訳であります。生みの苦しみとはまさにこのこと。しかし、待った分だけ良い本が出来上がり、こうしてキャストが固まり、本チラシの上がりが見えてきたのですからまあ良しとしましょうか。(ああ、やれやれ)

この日は、市川亀治郎・近藤正臣・谷啓といった主要キャストが撮影を予定しておりました。近藤さんと谷さんは以前も当カンパニーの製作作品にご出演頂いており、個人の性格は勿論、食事の好みも良く存じ上げてはおりましたが、市川亀治郎さんは歌舞伎以外の舞台出演はこれが初めてということで、小生は勿論のこと当のプロデューサーも些か緊張しておりました。さてこの亀治郎氏、父に市川段四郎、伯父に市川猿之助を持つという歌舞伎界でも名門の家柄に生まれた云わば歌舞伎界のサラブレッドであります。現在は大歌舞伎をこなす傍ら、自ら“亀治郎の会”を主催したり、いつかこのつぶやきでもお話した若手歌舞伎役者の登竜門である浅草歌舞伎などにも出演し、将来の歌舞伎界を背負って立つ逸材として大きな期待が寄せられている存在でございます。この日の亀治郎さん、ラフな格好で“普通のお兄さん”っぽく登場されたのですが、メイクを施し、撮影用の着物に着替えるや否や大変身!着物の着こなしが堂に入っているのは云わずもがな。カメラマンの要求に応えてこなす流し目は、「コリャ、たまらん・・・」嘆息とはこういう時にこそ吐くものであることをしみじみと感じさせて下さいました。

近藤正臣さんといえば、当カンパニーでは随分沢山の仕事をお願いしておりまして、最近では「鹿鳴館」や、そうそう昨年6月の舞台「暗い日曜日」でも素敵な芝居を見せて下さいました。青春スターと呼ばれてからかれこれ30年以上もたとうというのに、若々しい感性、そしてあの“気障っぽさ”(これは勿論褒め言葉です)は相変わらずでございます。ここだけの話、ジーンズの穿きこなし一つとってみても、お孫さんがいらっしゃるとはとても思えません。ところで皆さまは覚えていらっしゃいますか?正臣さんが出演されていた当時の小・中学生を虜にしたあのTVドラマ、「柔道一直線」。このドラマの中で正臣さん演じる柔道家が何とピアノの鍵盤の上に立ち、足の指でピアノを軽やかに弾きこなした場面を・・・。このシーンは余りにも衝撃的でたちまち反響を呼び、当時全国の小学校の音楽教室ではピアノの鍵盤に乗っかる子供たちが激増するという社会現象まで起しました。ちなみにこの場面の解説を致しますと、正臣さん演じる柔道家が上達を望む主役の高校生一条直也(確かこんな字だったと思います)に対し、「一条君、柔道が強くなりたければ、足の指先まで自由に動かせなければならないんだ・・・」などと尤もらしい台詞を吐くシーンでございました。何はともあれ、このドラマの影響により全国の柔道場には入門を希望するちびっ子達がワンサカ押しかけ、その中には後に全日本選手権9連覇を果たした不世出の柔道家、あの山下康裕氏もいたというのですから面白いというか、恐れ入ってしまいます。このシーンのことを正臣さんご本人に尋ねますと、恥かしがるどころか、「いやぁ、あれはね、実際に僕が鉄棒にぶら下がりながら撮影したんだよ。曲はネコ踏んじゃっただったんだけど、一応それらしい(音の出る)鍵盤の上に足を乗せていたんだ・・・」などと、本当に楽しそうにお話をされて、気が付くと当時このドラマをライブで観ていた(小生も同様ですが)今はいいおじさん達の人だかりが出来てしまうのであります。正臣さんのこと、そして氏が所属する事務所の社長(この方は何とこの業界に50年以上もいらっしゃる女性でございます)のことなどを話し出すと、それこそ枚挙の暇がなくなってしまいますので、この続きはいずれまたお話致しましょう。

さて、今回最後にご紹介するのはご存知、谷啓さん。別にオーバーな動きをする訳じゃあないけれど、この人が入ってくると、スタジオ内が何だかホワッ、ポカポカっていう感じになるのです。物静かで、穏やかで、そして可愛らしい(大先輩、ゴメンナサイ!)。どんな道でもそれを究めた人というのは皆こうなのでしょうか。決して偉ぶったり虚勢を張ったりせず、でもその存在はしっかりと大きなものとなっているのでございます。

実はこの日、谷さんのお人柄を示す瞬間に立ち会いましたのでご紹介しましょう・・・。谷さんがスタジオ入りされた時、あいにく前の方の撮影が押しておりまして(長引いておりまして)、メーク室が一杯。メイクさんの手が空くまでの間スタジオの隅の丸テーブルでお待ち頂いたのですが、その間プロデューサーから今回の役どころの説明やら撮影の時の注文などを聞いておられました。やがてそれも済んで、何となく手持ち無沙汰になった時、やおら立ち上がってスタジオを出て行こうとされるのです。と、そこに間髪を入れず付き人さんが「トイレですか?ご案内します」と近寄ったところ、「ううん、いや、べつに」と一旦はお座りになったのですが、暫くするとまた立ち上がって、今度は「いやあ、いいから、いいから」と、気配りの利く付き人さんを自ら制止ながら、スタジオの外に出て行かれたのです。小生、たまたまその時に出入り口の脇に立っておりまして、聞いてしまったのですが・・・谷さんったら、「探検してこようっと」ですって。探検ったって、そこは地下2階のスタジオ。同じフロアにはもう一つスタジオが有るだけで、他には何にもありゃしない。でも、きっと本当に探検したかったのでしょう。勿論ものの2〜3分で戻ってこられたのですが、この独り言、これぞ谷さんのお茶目なお人柄を表した深〜い“つぶやき”と云うのでしょうか。小生益々この大先輩を大好きになったのでございます。

嗚呼、気がついたらこんなにも長くつぶやいてしまいました・・・。

この舞台、今回ご紹介した方以外にも本当に素敵なキャラクターが揃っています。これからもまたことある毎にご紹介して参りましょう。てなわけで、次号のつぶやきもどうぞお楽しみに。ではでは

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