衝撃!改めて痛感する「読書のススメ」 思わぬ展開の巻
小生がこのサイトでつぶやかせて頂くようになって早くも36回目を数える今回、本日はいささかの勇気をもって“読書のススメ”という極めてありきたりな(?)テーマにて改めて読書(及び言葉)の大切さについてお話ししたいと思います。
ご覧下さっている先輩諸氏には釈迦に説法といったところかもしれませんし、またこれまでの舞台制作日記とは少しばかり内容が異なりますが、そこを大目に見ていただきながら若輩の“今さら話”にどうぞお付き合い下さいませ。
さて、こんなお話をしようと思い立ったのには訳がございまして、実は小生、先日とある2人の老婦人とお会いし、その時の会話に大きな衝撃を受け、改めて読書の必要性を思い知ったからなのであります。
舞台制作というかなり特殊な職種を生業(なりわい)としている小生、周りを見渡せば有名・無名問わず山ほどもの役者、脚本家、演出家、装置家、照明家がおりまして、こうした環境の中で視覚や聴覚に刺激を受けない日などただの一日も無いという毎日を送っているのではありますが、この老婦人たちと過ごした2時間ほどの時間はこうした日々の刺激に勝るとも劣らない感動でございました。
今回はそんな感動をつれづれなるままにお話致しましょう。
さてさてこの2人の老婦人は現在南房総(千葉県)の片田舎にひっそりと住んでおられます。既に他界した小生の叔父が晩年をこの町で過ごし、生前この方たちとご近所付き合いをさせて頂いていたこともあり、何度かこの地を訪れたことのある小生もお2人のお顔は存じておりました。(但し、あくまでもこの時点で小生が知るこの老婦人たちの素性(?)とは、・前は東京で仕事をされていたらしい。 ・現在は年金暮らしをされている。 というわずか2点でございました。)そして先日、野暮用でかの地を訪れた際、「このまま東京に戻るのもつまらないし、親しく話しをしたことはないけれど、時間潰しにお婆ちゃま達を相手に茶のみ話しでもして帰るか。」などといういささか不遜な、ほんの軽〜い気持ちでこのお2人を訪ねたわけであります。それがまさかの展開になろうとは…。
菓子折りを携えた小生が通されたのはリビングルーム。(とはいえこの家の1Fはリビングと台所、2Fは寝室になっている為、客が通されるのはこの部屋しかないのではありますが…)明り取りの窓からはやや西に傾きかけた冬の陽射しが心細げに差し込んでおりました。
「まあ、よくお出で下さいました。散らかっていますが、どうぞ、どうぞ。」
「お忙しいのにわざわざこんな田舎までご苦労さま。ゆっくりしてらして下さい。」
迷惑に違いない突然の訪問客に対しても嫌な顔をされず、優しい言葉とともに手作りのケーキとコーヒーを出して頂き、(時間潰しのはずの)早速茶飲み話が始まりました。季節の話を皮切りに、やがて庭に造られた畑の野菜の話、それらを狙って夜な夜な畑を荒らす狸や狐、またこうした小動物が棲み処とする裏山の話。家の前の貯水池に飛来した渡り鳥と、もともとここに営巣している鴨との縄張り争いの話。最近亡くなった飼い猫を最後に、ペットはおろかもう外をうろつく猫にも餌をやらないと決心したことなどを伺いながら、お互い思いつくまま気の向くまま、花を咲かせた四方山話(よもやまばなし)は何の脈絡も、またこれといった問題もなく一応盛り上がっていきました。とそのうちに「ところで貴方は東京でどんなお仕事をなさっているの?これまで伺ったことがありませんでしたわね。」という問い掛けがあり、これを機にこの盛り上がった茶飲み話は当然のようにそのテーマを舞台の話へと移行し、さらに続けられていったのであります。さあこうなったら口八丁手八丁。もともとお年寄りと話しをすることが大好きな小生は、ここぞとばかり舞台について熱弁を振るったことは言わずもがな…。皆さまも想像に難くないのではないでしょうか。(何せこれが本業なのですから)
しかしそんな中、やがてしゃべり疲れ、口が渇きつつあった小生に片方の婦人がこうおっしゃったのです。
「まあ、ご活躍ですこと。そうですか、シェイクスピア、ギリシャ悲劇、秋元松代さんの作品までねえ。楽しそうですけれど、それじゃお勉強もさぞ骨が折れることでしょう。」と…。
「えっつ、あ・き・も・と?秋元松代さんをご存知なのですか?」と思わず身を乗り出す小生に対し、“何を驚くことがあるのでしょう”という顔をされながら、「いえ、ご本人を存じ上げているわけではないのですよ。」「でも…、秋元さんくらいは勿論存じてますよ。」とこともなげにおっしゃる。
「ということは、お芝居をお好きなのですか?」という問いに対しては、「いいえ、それほど熱心ではございませんでした。何せ食べることが最優先という貧乏生活をずっとしておりましたのでねェ。能や歌舞伎、オペラなんかに出掛ける方たちをいつも羨ましく思っておりました。私どもはもっぱら読書。たまさか仕事が休みの日などは朝から晩まで図書館で過ごしておりました。」とくる。
さあ大変、こうなると、もはやお婆さん相手の茶飲み話のレベルではございません。小生、俄かに背筋を伸ばし、襟元を正しこれまで延々とくっちゃべった(喋った)内容を思い起し、失言は無かったか?出鱈目を言わなかったか?と自らに問いつつ、ツーッと流れ落ちる背中の冷たい汗を確かに感じながらその後の展開に備えるのでありました…。 続く
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