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結婚恋愛「マイとボク」 -33-
By 千里一歩さん

天女山
平成2年の春から急に親しくなった青年がいた。加藤龍也さん(仮名=30歳)という。彼はボク達夫婦の仲がよいこと、マイが、けなげに仕事を手伝っていること、マイがボクの対人関係に細心の気配りをしていることに注目し、その夫であるボクという人間に興味を持った。それが、どのような意味を持つのか、その時のボクには、わからなかった。

ボクと龍也さんがはじめて会ったのは加藤伝三さん(仮名)という大地主が静養している屋敷森の離れであった。龍也さんは父親を早く亡くし、母親は地域の郵便局長をしていた。ボクが訪れた理由はこの加藤さんが地域の再開発に大きな影響力を持ちながら何も動かないことであった。龍也さんはあまり表に出ないが、なかなかの論客と噂に聞いていた。
若手の実力者を取材していたボクは、龍也さんを地域の奉仕活動に引っ張り出した。ある時、龍也さんが町造りについて同姓のハンバーグ経営者、五郎さん(仮名)を怒鳴りつけていた時、ボクは横から五郎さんを援護して龍也さんに苦言を呈した。龍也さんはむっとしてボクにも反発したが、それ以来妙に接近する機会が多くなり、ボクの意見にも耳を傾けるようになった。他人から直接、苦言をいわれたことのない龍也さんだった。

ボクの会社が経営難という話を聞いた龍也さんは「必要なぶんだけカネは出す」といってくれた。ボクの事務所を訪れた時、めずらしくマイに世間話をして、ボクとは違った表情をみせた。その時の印象がよほど心に響いたらしい。龍也さんの資金援助は確定し、本当に必要なぶんだけ何百万円も無造作に即日、出してくれるようになった。注文は「政治行政を正し地域のために役立つ情報活動をしてほしい。そうすれば黙って広告も集まる」というウソのような正義の実行であった。ボクは喜んで実行した。毎月決算書を出し、政治行政の奥まで調べ公表できそうなことは公表するようになった。

ところが平成3年8月の末。山梨県で加藤龍也さんが急死したという知らせを聞いた。驚いたマイとボクは発見された現場へ行った。死因は不明。正確な死亡日もわからない。以後わが家では8月27日を命日とし3年間こっそり墓参りした。(この日はボクの妹の命日でもある)山梨はマイの故郷である。現場の天女山公園で多くの写真を撮った。天女山公園は山梨県北巨摩郡大泉村の山頂にある。当時の看板では「日本全国の神々と天女が年に1度ここに集まると伝えられる。星空を最も美しく展望できる名所」とあった。加藤家の資産管理会社からの要請で死因の究明はできなかった。ユキちゃん(仮名=2歳)という一人娘がいたが、その後どうしているのだろう。

この話には複雑怪奇な後日談があり、ボク達は奇妙な体験をする。龍也さんとのつきあいは2年余であったが、ボク達夫婦にとっては終生忘れられない人物であり、東京生まれの龍也さんが山梨で亡くなったことにも運命を感じている。

(つづく)


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