| 結婚恋愛「マイとボク」 -23- |
By 千里一歩さん
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二人だけの時間 |
同世代の娘が事務所と自宅に存在することになり、マイとボクは2人でスナック遊びができなくなった。Hは8時間、Cは24時間、そばにいる。お互いに監視し合っているようなものである。自分達が行けば彼女達も連れて行かなくてはいけない。店に配慮してもらうことは簡単だが、他の客に声をかけられたりすると困る。そういう馬鹿な客は多いのだ。また自分達も真面目な顔をみせなければならない。「ねえボク。事務所だけでなく自宅でもガスが出来なくなったよ」とマイがいう。ガスとは放屁のことだ。
「そういう時はトイレに行けばいい」と教えたが、これまでお互いにガス競争したことも少し正さなくてはいけない。感じやすい年頃の娘だ。大人の世界に関心が高い時でもある。わずかなことも観察されていると思わなくてはいけないだろう。
これまでボク達は自由すぎた。少し品よくしよう」と申し合わせた。生活の変化はこれだけではなかった。セックスレスがはじまったのである。Cの来訪を機に、マイとの関係は徹底したプラトニック・ラブの世界に入った。その後誘っても「イロキチガイ!」と敬遠されることが当たり前になった。ついに永久的な精神主義者になってしまう。
ただ不思議なことに精神的には以前より結束が固まってくる。マイの父や義母も他界して、お世話になったことを思い出すたびに手をにぎり合う。時折それが新鮮に感じられて家庭内恋愛のような気分になることがある。たぶん喜ぶべきことなのだろう。
「夫婦って面白いね。他人同士なのに親兄弟より深い家族になる」と話し合うこともある。本当は「40すぎて結婚20年で女房を口説く努力が必要になるとは思わなかった」といいたいのだが、その台詞を聞いてくれそうな相手もいない。マイは夜、Cと並んで寝る。昼はHと食事する。朝食と夜食だけマイとCを前にボクが異物のように同席させていただく。ボクは酒が飲めないから、一人で酒場に行くということがない。
その点、マイとCは酒に強い。二人が酔って盛り上がることも多くなった。それを横目で見ながら、ボクは話のわかるオジサンを演じなければならない。飲めないボクを誘ってくれるような個人的な友人もいない。仕事関係者で誘える人物といえば、みんなアルコールが強い人ばかりであった。それに、もう一つショックなことがある。それは「おじちゃん」と毎日呼ばれることである。
確かにボクは「オジ」であり、マイは「オバ」である。ただ45歳になったとはいえ、ボク達の精神年齢は25歳のままだ。それが「オジチャン」「オバチャン」と連発されると急に歳をとった気分になる。これもマイの非合体宣言に深いかかわりがあると思う。スナックに行けば、まだ独身で通るのだ。「お兄ちゃんと呼ぶのも変かな」と、それとなくCに聞くと「あははは」と笑って終りだった。
(つづく)
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