| 結婚恋愛「マイとボク」 -20- |
By 千里一歩さん
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パリジェンヌで、カラオケ大会が開かれた。会費制で満席。客だけで100人以上はいる。「社長もぜひ参加してください」とI氏が事務所を訪れた。嫌いなことではないから承知する。ふだんは点数など気にしていないから気楽に歌っていたがコンクールとなれば作戦が必要になる。
20歳の時、ボクはラジオののど自慢で九州一になったとマイが吹聴している。じつは九州一でなく長崎一になったことがあるのだがI氏には「九州一」のままである。「うちのボクは歌だけはうまい。初デートの時、歌ってくれたのでホロッとした」とI氏夫人のTママに話している。
そういわれれば、思い出す。初デートの日、新宿・伊勢丹前で1秒差の縁を得たボクは、夕暮れの神宮外苑の中を歩きながら、人目もはばからず、思い切り大きな声で「イヨマンテの夜」「雨に咲く花」を歌ったのである。当時カラオケはない。これは自分を早く理解してもらいたいというアピールなのだが、二度とこんな真似はできないだろう。勝負のつもりで真剣に歌ったおかげで、どうやら彼女の印象に残ったようだ。その意味では、歌はボクの人生に大きな役割を果たしている。
ところが、マイも中学生の時から村では歌がうまいと評判だった。それは同窓会があると必ずレクエストされていることでもわかる。お得意なのは美空ひばりの「越後獅子」「車屋さん」などである。なのにボクには、こうした少女時代の話をしてくれたのは10数年すぎた頃からであった。めまぐるしい日々であったが、照れくさい思いもあったようだ。ラジオで挑戦したボクには一目置いていたのかも知れない。
ともかくボクは店の主催といっても名士も集まるコンクールに出場して三位までに入らなくてはいけない。マイと他のパブに入り練習することになった。優勝すれば賞金と記念品が出る。久しぶりに楽しい緊張の毎日がはじまった。
カラオケには、理屈を持っている。まずキイを自分に合わせてもらうことが出来るかを確かめる。素人コンクールの場合は、曲が派手であることだ。どんなに上手に歌っても地味な歌はインパクトがない。声はあまり大きく出さないことだ。練習のやりすぎで肝心な時に喉を枯らしてしまったという例は多い。
こんな調子で当日に臨んだ。3、4人「おっ。うまいなあ」という人がいる。「大丈夫よ。ボクのほうがうまいから」とマイはボクに期待する。審査員は、さすがにI氏らしく有名な作曲家を呼んでいた。次第に緊張してボクの番になった。長崎で実績のある「イヨマンテの夜」を歌った。無難な選択だった。ボクは優勝した。マイの面目は保たれた。ボクもこんなことで妙に自信がついた。仕事にも張り合いを取り戻した。
(つづく)
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