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振り返れば楽しきかな我が人生 人生イメージ


結婚恋愛「マイとボク」 -18-
By 千里一歩さん

毛皮
昭和57年



年に一度、利益のあがる仕事が入っていた。M銀行からだ。ボクに飛びぬけた才能はない。が、面倒くさい企画を必要とするものは得意だった。デザイン会社と印刷屋、それに編集代行業のノウハウを知るボクの個人芸は大手企業を向こうに回して決してヒケをとらない。企画は一人で立てられる。プレゼンテーションもつくることができる。初歩的デザインもできる。写真撮影も何とかできる。営業もできる。接待する技も知っている。

つまり印刷に関連することはトータルで話すことができた。と、いうわけで、M銀行の仕事を終えて入金を待つばかりと鳴った時、ボクは余分に利益を上乗せできた金額で、ある買い物に1日をつぶした。銀行の仕事は納品が済めば1週間で入金になる。

買い物はミンクのコートであった。ある時マイが「ああミンクのコートを着てみたい」とため息をついたのである。マイはボクに対して自己主張したり、買い物をねだったりしたことはない。一万円以下なら自分の判断で買うことがあるが、それ以上の金額になると必ずボクに相談する。この習慣はその後も変わらない。二人に共通していることは「必要なものであれば買う」だった。

その点、毛皮のコートはぜいたく品である。マイは深く考えないで、ふともらしたにすぎない。当時は毛皮ブーム。神田界隈でも毛皮のコートを着た女性をよく見かけるようになっていた。それを、うらやましそうに見るマイにボクは決心した。「よし!毛皮を買うぞ」50万円の予算を用意した。それとなく聞くと「わたしは、背が低いから長いコートは駄目。上だけの短いコートがいいわ」という。

「ちょっと調べ物してくる」といって飛び出したボクは、まず青山1丁目から渋谷まで歩いた。狙いはミンクである。おしゃれの洋品店をのぞいたが毛皮は長いものばかりで、短いものではキツネしかない。それに長いミンクのコートは100万円以上であった。なるほど短いということは安く買えるということなのだとわかった。青山学園の前にある洋品店に希望に近いものがあったので「後日、女房をつれてきます」といって、一応とっておいてもらった。それでも、もっと調べようと新宿へ向かった。

新宿はデパートより地下街に思わぬ出物がある。しかし短いコートはめずらしいようだ。「そういう短いコートはありません」といわれた。そういえば、あまり見たことはない。地下鉄に乗って銀座へ向かった。銀座4丁目から新橋へ歩いた。ついに疲れて新橋から神田に向かう。事務所でマイが「何よ疲れた顔して」というので、すべて本当のことを話した。慣れないことをするものではない。「気持ちはうれしいけれど、いいの?本当にプレゼントしてくれるなら、有楽町ビルに行けばあると思う」というわけで年の暮れ、50万円をにぎりしめミンクのコートを買いに行った。さすがに多くの毛皮がそろう専門店であった。 

(つづく)


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