 道成寺
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道成寺のふるさと
3月の歌舞伎座では坂田藤十郎の喜寿記念と銘打って「京鹿子娘道成寺」が上演されますが、この幕切れのところに市川團十郎の荒事「押戻し」が登場して、團十郎・藤十郎という東西二大名跡が同時に舞台に乗るという歴史的なイベントとなります。
江戸で活躍し荒事(あらごと)を得意とした初代市川團十郎と、上方で和事(わごと)を創始した初代坂田藤十郎はちょうど同じ元禄の時代に生き、お互いに評判を聞きあっていたとは思いますが、一緒の舞台に乗ったことはないようです。確かに今のように新幹線ですぐ行けるような時代ではありませんから無理もありません。
團十郎の名跡は現・十二代目まで脈々と受け継がれてきましたが、藤十郎の名は三代で途絶え、ようやく平成17年に「中村鴈治郎改め(四代目)坂田藤十郎襲名」が実現して231年ぶりに復活しました。しかしちょうどその頃は團十郎さんが重い病で闘病中、なかなか一緒の舞台に乗る機会がありませんでしたので、今回の舞台をお二人ともとても楽しみにしているようです。
ところで今回のサブタイトル「喜寿記念」という案をスタッフから聞かされた藤十郎さん、つい「どなたの?」と訊ねてしまったそうな。「歳のことなどすっかり忘れて」と、いつまでも若々しいのはうらやましい限り、ちなみに喜寿といえば77歳ですが、数え歳ですからご本人は満75歳、念のため。
さてその「道成寺」は申すまでもなく数ある歌舞伎舞踊の中でも最も代表格。羽子板の絵柄としても赤い衣裳に烏帽子姿はお馴染みでしょう。この演目は紀州・和歌山県に伝わる「安珍(あんじん)と清姫」の伝説がベースとなり、能の名曲でもありますが、やはり歌舞伎の「京鹿子娘道成寺」が圧倒的にポピュラーでしょう。
その伝説の舞台となっているのがまさしく道成寺。このお寺は舞台上の架空のお寺とお思いの方もあるかと思いますが、実在する、それも1300年の歴史を誇り和歌山県内最古の寺として知られる名刹です。私も幾度か訪ねたことがありますが、まさしく舞台の美しさそのもの、広々とした境内に三重塔と立派な本堂がそびえ、見事な景観です。場所は「御坊」といえばお分かりでしょうか、大阪方面からJRで南紀方面へ向かいます。御坊の次に「道成寺」という駅もありますが、急行が止らないのでちょっと不便なようで・・・・東京方面からですと飛行機で関西空港あるいは南紀白浜でしょう。
また道成寺の舞台面といえば満開の桜が咲き乱れていますが、実はこのあたりは梅の名所、南部(みなべ)の梅、あるいは南高(なんこう)梅といえば梅干の中でも最高級品です。陽気が温暖ですから、他にもおいしい果物が豊富に採れますし、もちろん和歌山といえば「みかん」も有名。観光ガイドではありませんが、一度お訪ねになるようお薦めします。本堂横の縁起堂では、住職さんの「絵とき説法」が毎日行われ、安珍清姫のお話が楽しく聴けます。
(つづく) |