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お芝居にはさまざまな動物が登場
今年は子歳、歌舞伎にも鼠が登場する演目がいくつかあります。また鼠ばかりでなく、干支の中から拾ってみても、「丑(牛)」、「寅(虎)」、「卯(兎)」、「午(馬)」、「申(猿)」、「酉(鳥)」、「戌(犬)」、「亥(猪)」と、歌舞伎の舞台にはいろいろな動物が登場します。「辰」は強いていえば龍神のようなものがありますが、「巳(蛇)」と「未(羊)」は、実は私もなかなか思い当たりません。何かこれという演目がありましたら是非お教えください。
まず鼠から行くと、代表的なものといえば「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」でしょう。これは仙台の伊達騒動を題材にしたお話で、お家乗っ取りをたくらむ悪人の仁木弾正(にっきだんじょう)が妖術を使って鼠に変身し、一味徒党の連判状をくわえて逃げ去るという場面。ここでは小柄で身の軽い役者が着ぐるみのようなものを着て、バック転などを繰り返すアクロバティックな立回りで観客を楽しませます。「金閣寺」では縛られた雪姫が足で鼠の絵を描くと、そこから抜け出た白鼠が縄を食い切って姫を助けるというおとぎ話のような展開。また「鼠小僧」というおなじみの盗賊もいますが、これは動物ではなく人間・・・・。
舞台に登場する動物の中でなんといっても一番多いのは馬でしょう。馬は古今東西、人間の歴史とは切っても切れず、しかも武士の世界では重要なパートナーですから登場頻度が高いのも当然でしょう。歌舞伎十八番の「矢の根」では曽我の五郎が馬にまたがって勇壮な幕切れを見せ、「源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)」の「実盛物語」ではキリリとした武将・斎藤別当実盛が幼い太郎吉(後の木曽義仲)に馬乗りの手ほどきを見せて、その温かい人間味が描かれます。平敦盛は美しい若武者として知られていますので「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」などに登場する敦盛の馬は美しい白馬、また「當世流小栗判官(とうりゅうおぐりはんがん)」では白馬が判官と照手姫の二人を乗せて宙乗りを披露します。傑作なのは「馬盗人」という舞踊劇、全く人を食ったような駄馬が、最後は弁慶の飛び六法で花道を引っ込みますので客席は爆笑となりますが、中に入って足をつとめる役者は体力も極限でこれは見ていても大変そうです。
その他、牛は「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」の牛車、虎は「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)」の幕開きで絵から抜け出た虎が竹薮から顔を出し、舞踊の「玉兎(たまうさぎ)」では可愛い兎が餅つきというお決まりのテーマで登場。猿は「近頃河原達引(ちかごろかわらのたてひき)」に猿回しの猿が登場してしばし観客を和ませ、「菅原伝授」の「道明寺」では鶏が夜明けの鳴声を響かせます。「申酉(さるとり)」という清元の舞踊もありますが、これは芸者と鳶頭の粋な演目、唄い出しの『申酉の〜』から来たものでここには猿も鳥も出ては参りません。犬は「三人吉三」で因果応報の複雑な人間関係にかかわり、犬のたたりの恐ろしさを物語ります。
さらにコミカルで人気のあるのが「忠臣蔵 五段目」の猪でしょう。この場面の登場人物は勘平、与市兵衛、定九郎など、ことごとく殺されたり悲劇に見舞われるのですが、この猪だけは勘平の鉄砲にも撃たれず命拾いをし、「五段目で 運がいいのは 猪(しし)ばかり」というよく出来た川柳も残されています。
(つづく) |