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広告業を先取りした「助六」
1月の歌舞伎座では夜の部に「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」が上演されています。花川戸助六に市川團十郎、花魁(おいらん)の揚巻(あげまき)に中村福助、髭(ひげ)の意休(いきゅう)に市川左團次といった配役で、いかにも正月の歌舞伎座に似合う華やかな舞台です。この演目は約2時間という長丁場ですが舞台は「三浦屋格子先の場」という一場面のみで、途中の幕間も場面転換もありません。それでもストーリー展開と共に不思議なほど目先が変わって見えますので、全く飽きることのない2時間です。
さらにこの演目の特徴は、素晴らしく時代を先取りした広告宣伝の手法といえそうです。幕が開くと舞台の両側に「新吉原 竹村伊勢」という字が沢山書かれているのが目にとまります。「竹村伊勢」というのは吉原に実在したお菓子屋さんで、最中(もなか)を初めて売り出したとも伝えられていますが、大変人気のあるお店だったようで、そのお菓子に使われる蒸篭(せいろう)を積み上げている風景がまずこの舞台面に描かれています。やがて華やかな花魁道中がやってきて吉原随一と評判の揚巻が登場、少し酒に酔っている様子ですが、そこで差し出されるのが「袖の梅」というお薬、まずはこれを酔い覚ましに服用します。
揚巻が引っ込むと花道から助六の登場、幕が開いてから主人公の助六が登場するまで40分近く掛かりますが、それまでの華やかさに「粋」が加わって空気も一変、「待ってました!」というのはこのことかと実感させられます。
さらにいろいろな登場人物が・・・・勢いよく駆け出してきた「福山のかつぎ」はうどんの出前持ち、朝顔仙平(あさがおせんべい)というコミカルな奴(やっこ)は「砂糖煎餅」「羽衣煎餅」「双六煎餅」「姿見煎餅」と自分の名前をもじって数々の煎餅尽くしをまくしたて、まさしく煎餅屋さんの大宣伝をご披露。といった具合に、このお芝居は数々の広告宣伝が盛り込まれて、さしずめテレビCMの元祖のようです。またちょっと風変わりで人気なのが「通人」、なよなよと吉原の町を流し歩いて助六に喧嘩を吹っかけられ、そこで現代風のギャグで観客を喜ばせる自由奔放さも歌舞伎の持ち味、今回はやはり予想通り「どんだけ〜」と「そんなの関係ねえ」で客席を沸かせました。
「助六」の初演は二代目團十郎、後に「歌舞伎十八番」が制定されてさらにこの演目がおなじみとなったのは七代目團十郎の時代ですが、さてこういった広告が盛り込まれるようになったのはいつ頃か・・・・そのあたりは不明ですが、江戸の人たちの優れたアイディア、また歌舞伎芝居がいかに大衆に根差し親しまれていたかということなどが、こういったところからも伺えます。なにより、歌舞伎は楽しく見ることです。
(つづく) |